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ひとりかくれんぼ

私は米を詰めて赤い糸をグルグル巻きにしたポプリンにこう唱えた。
最初の鬼は晴美だから最初の鬼は晴美だから最初の鬼は晴美だから。
風呂場の風呂桶にポプリンを置いた私は、部屋中の電気を消し始めた。

何やっているかと言うと…
ひとりかくれんぼ」という、降霊術とか自分を呪う術とか言われている非常に危険な(オカルト的に)遊びなのだ。
たまたまその遊びが出来る環境と必要な物が揃っていたので、(勿論危険を承知して)やってみたのだった。
そして私は手順通りにテレビをつけ、特にテレビに異常はないことを確認して目を瞑って10数え始める。
………はーち、きゅーう、じゅう。

数え終えて目を開けた瞬間、テレビが触ってもいないのにいきなり消えたのだ―…私が知っている情報によれば知的レベルは高い方らしい―
私は緊張しつつ、カッターナイフを持ってポプリンがあった風呂場に向かった。
幸いにもポプリンはそのままだったので、私はほっと一息ついて手順通り「ジーベン見つけた。」と言ってポプリンにカッターナイフを突き刺す。

次はジーベンが鬼。

そう言った瞬間、背中にぞっと鳥肌が立った。
見えないけど誰かがいると私の第六感が告げたのだ。凄く、嫌な予感がする。
私は急いで押し入れの中に隠れた。

押し入れに用意してあった塩水を半分口に含ませ、外の様子を伺う。
私の第六感の予想は的中したらしく、誰かが呼んでいる声がはっきりと聞こえる。
殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!どこに居るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

その声が少し遠ざかった後、私はそろそろ押し入れから出て風呂場に向かった。
そろそろ終わらせないと…見つけられて何をされるか分からない。もしかしたら乗っ取られたり殺されたりするかもしれない。
だけど、風呂桶に置いたはずのポプリンは無かった。霊が持ち去ったかもしれない。
ポプリンを探そうとして風呂場から出た瞬間、私に戦慄が走った。

白い和服のような物を着た、両端の髪の毛は長いのに真ん中だけは禿げているという髪型の男がいた。血の気が無いし頭には矢が刺さっているから、明らかに普通の人間じゃない。そしてその手にはポプリン
殿!やっと見つけましたぞ!
私に二度目の戦慄が走った。いつの間に塩水を飲み込んでしまい、私の姿が見えるようになってしまったのだ!
殿!切腹するのですか!介錯は拙者にお任せください!
男の霊は何か言った後、ポプリンの近くに置いてあったカッターナイフ…じゃなく日本刀を取り出して構えた…このままじゃ殺される!!

私は思い切ってまだ残っていた塩水を男の霊に向かって思いっきりかけたものの、全く効かない…寧ろ更に興奮してこちらに向かってくる。
恐怖で頭が真っ白の私は思わず外へ逃げ出してしまった。

男の霊は思ったよりも足が速く、一向に差が広がらない…寧ろ縮まってきているような気がする。
殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!拙者を見捨てるつもりですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
男の霊が悲痛な声で叫ぶが、振り向くに振り向けなかった。振り向いた拍子に首を斬られるかもしれない。

未だ薄暗く誰もいない街の路地に人影がぽつりと現れた。しかもその人影は私に向かってくる。
方向転換して避けようとしかけたものの、男の霊に足を掴まれて転んでしまった。
「殿!やっと捕まえましたぞ!さあ、切腹するのです!」
ああ、もう斬られて死ぬかもしれない…私はそう思って目を瞑った…




何が起こったのか分からない…けれども、斬られていないことは分かった。

起き上がって辺りを見回したけど、私を追いかけていた男の霊はどこにもいなかった。
こういうことは興味本位でやらないことだな。今回は私がいたから助けられたが、次回からも私の助けが来るとは思わないことだ。
いきなり大人びた少年のような声で、忠告されて私はビクッとする。よく見れば外ではなく私が住んでいた部屋の中だ。
そして銀髪の青年が男の霊が持っていたポプリンを手にして椅子に座っていた。
「では、私は皆に騒がれる前にさっさと帰るからな。後、人形の処分は私が代わりにしておく。」
彼はそう言い、早歩きで玄関へ向かった。
「貴方は…一体何者なんですか?」
私はそう質問すると彼は、
私は…ただの魔術師さ。
そう答え、部屋から出て行った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実は私がひとりかくれんぼをした同日に、同様のことをやった人がもう一人いたのだ。
そして私と同様、霊に遭遇した。(私と違って外見はよく分からなかったらしいが)
その人はその霊に脅されて挙げ句の果てに、軍の施設付近まで追い回されて保護されたそうだ。
幸い怪我も無く、その後は何ともなかったようだったけど。

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